この世界に魔女がいればいいと思うのです。

それは、とある休日の朝に放送されるアニメの可愛らしい魔女っ子なんかじゃなくて、
昔々の童話に出てくるような、黒いローブと鉤鼻のベタな魔女でいいのです。
むしろそうであってほしいのです。

でも、シンデレラに出てくるような、
灰を被った娘に、衣装だけでは飽き足らず、
馬車まで用意してあげた彼女ではきっと駄目なんでしょうね。

平和なこのご時世、魔女は魔女ではなくなりました。
悪魔とつるみ、毒やら呪文をつかって人間に害を与える存在、
それが本来、魔女のあるべき姿じゃないでしょうか。
白雪姫に毒盛りリンゴを食べさせた彼女は、魔女の鏡だと言えるのかもしれません。

でもあたしは、いばら姫とおんなじ呪いをかけてほしいのです。

もしかなうのなら、あのひとに
もしねがえるのなら、あのひとに



ひゃくねんも変わらぬ美しい姿のままで眠れたらどんなに幸せか、
そう考えると震えが止まらないのです。

彼のいる世界で生きられぬのならせめて彼のいる世界で眠りたいというこのキモチ
あわよくば彼を、あるいはあたしを、美しい姿のままで閉じ込めたいと願うこのキモチ
あなたにわかるでしょうか。

動かない彼を見つめて、触れて、キスをして、なんて、

考えるだけでこの胸の昂揚は半端ないのです。


でも、あたしのくちづけなんかで彼は目覚めないの
だってあたしは彼のおひめさまじゃないから
彼の愛すべきひとは他にいるんだから


だから、そうね、あたしが醜く老いる前に、彼の隣で眠らせて。

彼があたしにキスをしてくれることはないだろうけど、
あたしが眠ったことを彼だけが知ってくれればそれでいいのです。


あたしは今夜もあの月から箒に乗った魔女が降りてくるのを待ってます。

この前だれかがにやにやしながら、素敵なひとを待ってるの、と言ったけど。


だから、違うのです。


(あたしの願いはきっと、素敵なだけの人には叶えられないわ、)


そしてあなたは言うのです。
馬鹿、とひとこと言うのです。
その瞳から雫が落ちてくれば、あたしは本望だと思えるのです。




(070913)