だれにも言っていない恋です
まだ誰もしらない恋です

あなたも、わたしも



冬の匂いがすると、さみしくなるのは何でだろう、時々瞼が熱くなって涙が零れ落ちそうになる。
マスカラで重たくなった睫毛を黒く滲ませるのが嫌でぎゅっと目を閉じた。


星みるの好き?
そんなやさしい顔して訊かれたら否とは言えなくて、てっきり夜景の見えるきれいな場所に連れ出してくれるのかと思っていた。
でもいつまで経ってもお誘いメールも電話もこなくて、ちょっと怒ってみたりしていた日曜日の朝4時(これは朝っていうのか、夜中っていうのか)
いつだったか設定してそのままだった彼専用のメロディーが寝癖で髪はぐしゃぐしゃ、まともに頭も働かない私を起こした。


「あの、今外にいるんだけどね」


やっぱりちょっとは罪悪感があるみたいでいつもより申し訳なさそうな声が飛び込んできて、思わず笑ってしまう。
こういうとこ、ずるいなぁ。



「・・・寝起き?」
「・・こんな腫れてる目見ればわかりますよね?」
「うん、でもメイクばっちりじゃない?なんか」
「いちおうです、一応〜」
「そう」

ははっ、と笑った彼の息が白く空気に残った。
ぼんやり暗闇に青が差したような光を浴びて、彼も私も白く発光してるみたいだった。


「ちょっと歩こうか」


別に手をつながれたわけじゃない
頬に手が触れたわけでもない

なのにどうして


どうしてこんなに胸がぎゅってなっちゃうんだろう


(私、変だ)

(だって、これじゃあ))





「あの、」
「ん?」
「どこの星みるんですか?」
「そこの、公園の隣の自販機」
「へ?」
「を通り過ぎて、民家の間通って・・」
「もう!」
「ははっ」



そんなやりとりを繰り返しながらすでに30分近く、そろそろ空も明るくなってきそうな気配。
マフラーを巻きなおして赤くなった鼻を隠した。


「どこ行くんですか、本当にもう」

「どこも、行かない」


ぴたっと止まった背中を凝視、ちょっとだけ振り返ったその横顔は悪戯に笑っていた。
私はわけが分からず首をかしげた。すると彼の指がまっすぐ上をさした。


「星はずっと、見えてたじゃない」
「・・・そりゃそうですけど」
「だから、星見ながら散歩してた、って事になるかなあ」
「で、でも私ぜんぜん星見てなかった・・」
「じゃあ今から並んで見てればいいよ」


ちょいちょいと手招きされて、そのまま彼の隣に並んだ。
右側だけが、あつい。


「星も見たかったけど」


「なんとなく、一緒に散歩したくなったから」



また、そんな顔して笑って


どくどく血液が心臓を巡って
どうしようもなく泣きたくなるのは 冬のせいでもなんでもなくて


「あれ、どした?」



(どうしよう、どうしよう)

(とんでもなく、うれしい)


(そっか、これって)



「なんでも、ないです」
「、なんでいきなり笑顔?」


寝起きだから?なんてちょっと笑った彼の手が髪の毛をくしゃっとかき回した。
どきどきと高鳴る心臓は、もう止まる術を知らない。


(あの瞬間、あの時から)


恋のはじまる音だった





e.(090115)