からだの中に響くような心地よい低音が鳴って、
電気のついていない暗い部屋の中、
わたしの指先で光が弾けた。

カーテンを細くあけると、
ちょうど赤い花片が散っていくところ。



「・・・花火!」


とっさにあの人にも見せたいなと思う。
あわよくば一緒に見られたら!なんて。



充電器にさしっぱなしの携帯。
いつだって履歴の一番上にある名前。
いつまで続く、呼び出し音にイライラしながら
にやにや笑いが止まらない。


ちょうどね冷蔵庫には缶チューハイが山ほどあったはず。
それ持ってふたりでベランダに並んで座ってさあ。



『もしもし?』

「あ、ね、ね、外みて!花火!」


・・・・・・・・

・・・あれ?変な沈黙。
何これ?


『ああー・・・ごめん、今、手離せなくて』


ばつが悪そうに、仕事がさと彼は呟いた。
受話器の向こうの困った顔が、目に浮かぶ。
(泣いたらダメだ、もうちょいがんばれ)


「そう、そっか」


どうん、とカーテンの間から漏れる音。
何だ、せっかくふたりで見れると思ったのに、



『・・・花火、見えるよ』

「どして嘘つくの」

『ほんとだよ。音も聞こえてるし』

「・・じゃあ、今の何色だった?」

『赤。でっかいの』

「残念。でっかいけど青でした。見えてないじゃん」

『う、ん・・・ごめん』



ぱらぱらと花火の散る音に重なって

(優しさという名前のうそを)(、ついた。)




「あーあ」

『・・・』

「今年の夏もこうやって終わっていくのかな!」

『ごめん』

「ふたりでがばがばお酒飲みたかったのにな!」

『ごめんたら』

「ねえ」

『ん』

「今度ふたりで花火しよ」

『・・・おー』



はだしの爪先にオレンジの光が反射した。
ああきっと彼は今、笑ってるかなあ。

早くみたい、な。
ふたりだけの花火、
虹色の光を散らして
左耳にひゅううと永遠の夏の音
右耳にくすぐったいぐらいあなたの声




(幸せかも、しれない。)





(080112)
同好会提出文!
季節外れ?否これは季節を越えた愛です(何
ちなみにお題は「やさしさというなのうそをついた」。
こういうのって実はセコいよねw