淡いオレンジの香りが部屋を満たしていた。
お風呂上りの彼の背中。ごつごつして、(なんかどきどき。)
そんな私の大好きな彼の背中にひとつ。


「・・・この傷、私がつけたの?」

「んー?」



彼の背中には、私がつけたと思われる傷跡が無数にあった。
その中にひときわ、肩甲骨の傍に、たてにのびた大きな傷痕。
無意識のうちにこんなものまでつけてしまっているとしたら、
私は早々に気をつけなければならない。



「痛、かった?」

「んーこれはねえ、違うんだ」



彼は肩ごしに私を振り向いて、
真剣な顔で、けどどこか笑いを噛み殺しているような顔で言った。




「俺ね、昔天使だったんだ」
「・・へ」
「ここにねえ、羽根が生えてたんだ。これは、その跡」
「・・・またそんなこと言って」
「ほんとだって」




確かによく見れば、その傷はちょうど
羽根でも生えていそうな場所にあるけれど
(でも、まさか、羽根なんて。)




「いいな、この傷、私も欲しい」
「・・・ひどくされたいの?」
「ちがくて」



(羽根が欲しいんだという言葉は飲み込んだ。)



「じゃあ、じゃあ、お願い」
「なに」
「また羽根が生えたら、今度は私も一緒に飛ばして」
「なんじゃそりゃ」




彼は半分笑い飛ばすように苦笑したけれど、
たぶん私の真意は汲んでくれたのだと思う。
また生えたらね、とうなずいた。




(080108)
たまにはちょっとえっちい話も。

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