好きだよ愛してるよ傍にいるよ
確かに君の言葉、だよね。



あたしは甘ったるい匂いにつつまれてケーキを焼いてる。

彼のお気に入りだった手作りのチーズケーキ。
上にはちょこんとブルーベリーを乗せる。



(そう、あの瞬間、あたしの時計は止まった。)


煙草の空き箱と
始めたばかりのギターと
永久に未完成な譜面と

彼の匂いが残っているのはそれくらいのもの。


(あたしの時間、あなたの時間、どこへいったの?)


「あ、卵のカラ入ったままで焼いちゃった。またなんか言われそ・・・・う、」

なんて、
は、笑える、
あたしはばかだ。
もういないのに


へたくそな演奏。まるでサマにならない。
カセットから流れる笑い声。
それをふわふわと包む煙草の薫り。
あのとき初めて、彼もあたしの作る味を知った。

遠い昔の話のようだわ、まるで。


(そんな思い出のものを、初めてひとりで食べようとしてる)


かじり付いた一切れは、全然おいしくなかった。
砂糖と一緒に放り込んだ、おかしな白い粉の味。


(ねえもうすぐそっちにいくよ)


甘ったるい匂いにつつまれて、
写真の向こうの彼に目配せ。




(070907)