「ちょっと」
「…ん?何?」
「あなたまさかそれ、残す気?」
「うん。」

私が指差したのは、おそらく彼のお母さんが仕切りとして入れたレタス。
彼はそれを、いとも簡単に残そうとしていた。

「うん。って………!あなたは簡単に野菜をゴミにできる人だったのね…。」
「ごみ、って…だって、つけるものが何もなくって…」
「はいマヨネーズ。」

食べ物をゴミにするなんて、ありえない!そんなことするの人間だけよ?
大体つけるものがないなんていうんなら、自分で持ってきなさい!

「ありがとう。」

マヨネーズをほんの少しだけレタスにつけて、極上の幸せにめぐり合ったかのような笑顔で派パクン、と一口。

「どういたしまして。」
「ところで、君は誰?」
「2年生です。」
「いや、名前を聞いてるんだけどね?」

見ず知らずの人間に、レタス食えとか言って、挙句鞄の中からマヨネーズ(ミニサイズだけれども)を差し出す、
という非常に恥ずかしい行為をしてしまった奴が、名乗れるわけがない。

「名前、教えてくれないの?教えてくれないなら、2年の教室全部回るからいいけど?」
「え、それはこまる」
「じゃあ名前。僕は斉藤創」

先にあなたが名乗りなさい、といおうとしたのに、名乗られてしまった…

「わ、私は…虚雪神奈デス」
「野菜好きなの?」
「へ?いや好きっていうか、子供の頃に両親に『食べ物を残すな!』って言われて育ちませんでした?」
「まあ、言われたけど…。偉いね、親の言うこと、守ってるんだね。そういうマジメな子、僕はスキ」
「はあ、どうも。」

うわ、何だこの人。初対面でレタス食えとか言った私を、スキ?
いや恋愛感情とかじゃないことは分かってる、でもそれにしたって変な人。

***

「今日はグリーンピースですか?」

学食の豆ご飯に入っていた緑な平和を、箸で器用によけて食べてる。

「!!みつかった…。だって!これだけは食べられない!ごめん!」
「いや、謝られても困るんですけどね?」

私は許可も取らず隣に座り、自分の持っていたトレイを置く。

「しょうがないなあ、私にください。その代わり、私のメロン食べて貰えませんか」
「メロン嫌いなの?」
「ハイ、っていうか、昔大好きで、食べ過ぎてダメになったんです」

勝手にグリーンなピースをぱくつきながら答える。

「へえー。あ、バナナもきらいでしょ」
「…なんでわかったんですか」
「うん、なんとなく言ってみただけ。」

“なんとなく”で言い当てられるほど、私は分かりやすいのか…。

「……」
「なんですか?」
「なんか、おいしそうに見えてきた」

そう言って、私が口に入れようとしていたフォークをくわえてしまった。

「んー、まずくは、ない、かなー?」
「間接キスですよセンパイ」
「え。……あっ!ごめん!つい友達といるノリで!!女の子ってこういうの気にするよね、ごめん!」
「いや、センパイがいいんならいいんですけど、」

むしろうれしい…ちょっとまて!
“うれしい”ってなんだ!!?
間接キスでうれしいとか私はヘンタイか!?

「おーい、戻ってきてー?」
「え?あ、はいはい」
「どうしたの?何か、苦悩してるかえるクンみたいな顔してたけど」

すみませんどんな顔ですかそれは。
かえる君ってあれでしょ?ファンシー手袋みたいなやつ。

「…あんな間抜け面をしてたのか…」
「は?間抜け?可愛かった、て言いたかったんだけど、」
「うえ?」
「うん?」

沈黙。

センパイは自分の言った事に気付いていないのか、分かっててなんてことない顔をしてるのか。
間接キスは気にしないけど、可愛いは気にするぞコラー。

「カエル君はタグみたいのついてるんですよ?せめてウシ君にしません?」
「ウシ君は薄汚れてるじゃん」

カエル君だって同じようなもんじゃん。

「…そっすか。」
「ね、帰りマック寄ろうよ。」
「センパイ、今は昼で、私達帰りの時間違うんですけど」
「僕まってるからさ」

にこ、と特上の笑みで言われて、断れる女子が世界に何人いるだろう。
多分、世界に沢山いるんだろうな。

「わかりました、なるべく早く行きます。」


***

「なー創、お前が最近いつも一緒にいる子誰?」
「神奈ちゃん?」
「いや名前とか聞いてないし。いつ仲良くなったん?」

知ってるよ、ばーか。お前の好みだろ、あの子。

「ん、レタス食えって言われた」
「…は?」

でも絶対やらねーから。

「今日はグリーンピース食べてもらった」
「あー、お前嫌いだもんな。」
「そしたらメロンくれた」
「いや、お前、何言ってんの?質問に答えろや」
「事実報告だよ。っていうか、付き合ってないしね」

アタックはしてるんだけどなー。最初っから。
アレ完ッ璧に気付いてないもんなー。
どーしよーかなー。
今日告白してみようかなー。

レタス食えって言った女の子に恋をしました。
なんて、変なヤツだなー、俺。

「何自嘲気味に笑ってんの。キモイ」

友人Aにヘッドロックを食らわせて、今日こそちゃんと告ってやる、

・・・と決意。





e.
作者あとがき:
一応最後のページだけ創くん目線。 
何かもう面倒臭くなって、ヒロインしか名前変換してないんですけど。 
やらなくっても良かったんじゃ、っていうのは言っちゃいけません。 
ブック終わっちゃった。どうしよう。 
あと2、3個のために改装とか新しいブックたてるのめんどうだなー。 

神奈様へ。こんなのでよければどうぞ。 
サイト改装(移転か。)おめでとうゴザイマス。 
いちご美味しそう。ケーキたべたーい